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2012年 09月 04日

【サンプル記事】小池壮彦 怪奇探偵ブロマガ

http://ch.nicovideo.jp/article/ar4621

 メルマガでは、新規原稿・未発表原稿・埋もれた過去原稿なども紹介するつもりだが、新規原稿では、「ナマ怪談」と「怪談の闇」という2つの柱を設定したい。

●ナマ怪談の巻

 私が初めて強烈な怪奇体験をしたのは、18歳のときである。それまでにも曖昧な経験ならあったが、気のせいだろうぐらいの感じですませていた。しかし、鍵のしまったドアが目の前でいきなり開いたり、カセットテープに勝手に音が録音されたりという、まったく説明できない事態にはっきりと立ち会ったのが18歳のときだった。

 俗に20歳までに心霊体験に出会わなかった人は一生出会わないという説がある。これは必ずしも当たっていないが、要はそれだけ本当の心霊体験に出会う機会は少ないということだろう。私の場合は18歳から20歳ぐらいの間に不思議なことが集中して起きた。その傾向は24、5歳ぐらいまで断続的に続き、20代後半になるとガクンと減った。

 若い頃の怪奇体験は『東京近郊怪奇スポット』と『心霊ウワサの現場』という本に書いたが、いまでは入手しづらくなっているので、リニューアルして電子書籍化することも考えている。そのなかの代表的な怪談「夏川ミサエの話」は、私が20歳のときの体験を書いたものだが、過去の怪談をセレクトした拙著『怪談 FINAL EDITION』には収録しなかった。終わっていない話だからである。

 先日、ひょんなことから古い手帳が出てきた。中身を見ると、ミサエの電話番号が書いてあった。仕事の書類をしまっていたダンボールのなかから出てきたのだが、保存した覚えはないし、だいいち私の手帳ではなかった。ミサエが持っていたものである。

 こういうことが、いまだにある。ミサエの歌声の入ったカセットテープもあるのだが、これは明確に処分した記憶があるのに、なぜかいまもある。

 以前、このテープでミサエが歌っている曲目を『不思議ナックルズ』vol.8(2006.10)に書いたことがある。そのなかの1曲に「シュガー・ベイビー・ラヴ」があるのだが、これは年代的にミサエが死んだ後にWinkがカバーした曲なので怖い・・・という感想をいただいたことがある。しかし、この曲はキャンディーズが先にカバーしていて、私の世代の感覚だと、日本ではキャンディーズの歌という印象の方が強い。だから、ミサエが死んだ後というわけではないので、その点は安心していただいてよい。

 もちろんミサエは、生前にWinkの存在は知らない・・・。

 こうしたことも含めて、いま起きていることや、未公開だった話も紹介していく。

●怪談の闇を見るの巻

 私が以前からよく通っていた道沿いに、金持ちが住む3階建ての御殿があった。この家が昨年5月に火災で全焼し、焼け跡から女性の遺体が見つかった。家の持ち主は、東京電力の元役員。遺体で見つかったのは、奥さんだった。

 世間ではさまざまな噂が飛び交った。火災のタイミングとしては、原発事故から2ヶ月後の出来事である。口封じか、いや本人は留守だったから脅しではないかなど、物騒なことが言われていたが、真相は明らかになっていない。出火原因も不明瞭である。

 実はおととしにもこの近くのアパートで火災があって、住人がひとり焼死している。そして周辺ではここ数年のうちに自殺や殺人もあり、不気味なことが立て続けに起きていた。

 この事態を〝呪いの連鎖〟という文脈で語れば、ひとつの怪談にはなる。しかし、単に呪いというだけではなさそうな、キナ臭い出来事である。東電元役員宅の火災は、放火による謀殺未遂なのか、それとも最初から奥さんが狙われたのか。むろんただの失火かもしれないが、何やら現実の裏側がひょっこり表に顔を出してしまったのではないかという気持ち悪さがある。

 この火災の報道は、当初ディテールが錯綜していた。家の作りが鉄筋コンクリートなのか木造モルタルなのか、報道によって食い違いがあった。また火災時に消防の発表として「逃げ遅れた人はいない」とアナウンスされたのに、あとから遺体の発見が公表された。

 建物の様子からすると、作りは鉄筋コンクリートと思われる。火災後にも建物の外形は残っていたし、木造ではないだろう。ただ、それにしては激しく火の手が上がっていて、内部はひどい焼け方だった。可燃性の液体でも撒かないとああはならないのではないかという見方もあったが、その辺のことは報道されないまま世間の話題からも消えていった。

 この火災は、元東電役員の家ということばかりが注目されたが、家主の現職は、日本工営の代表取締役副社長である。日本工営は、東電の事業を請け負って発電所や送電設備を造る役目のコンサルタント会社だが、その企業名から「ムネオハウス事件」を思い出す人もいるだろう。「ムネオハウス」の入札補助を担当したのが日本工営だった。

 あの事件は、北方領土の国後島に「友好の家」を建てる際に、入札情報を地元業者に漏らしたというので、鈴木宗男元議員や、業務に絡んでいた日本工営の担当者も有罪になった。しかし、その後に国策捜査という話が出てきて、本当は鈴木さんは悪くないとか、いや少しは悪いとか、不透明なまま話が推移した。結局本当のことは表に出ていない。
 
 ロシア利権に接近しすぎた鈴木氏が、アメリカの意向もあって失脚させられたという説明も普及しているが、この件が表沙汰になったとき、追及が深くなると一番困るのは外務省だった。だから鈴木氏を生贄にして手打ちにしたのだが、要は開発援助事業のからくりがバレると、必然的に日本のからくりも表に出るので、そこに煙幕を張ったのだ。

 日本工営というのは、戦後賠償ビジネスで儲けてきた会社である。その後はODA事業で巨大企業に発展した。ODAは政府が発展途上国の援助と称してインフラ整備などを行うわけだが、これが政府と企業の癒着による巨大利権で、その暗部については高橋五郎氏との共著『真説ニッポンの正体』(9月27日発売)でも触れている。破天荒な裏会計マネーが生まれるシステムで、基本的には日本が原発を導入したからくりと同じである。

 なぜ原発をやめないか。儲かるからだといえば簡単に聞こえるが、実際には単に儲かるという次元の話ではない。地球規模で動いている巨大利権である。このからくりにどっぷり浸かっている連中にしてみれば、作業員の被曝の実態などはどうでもいいことだし、それどころか、何百何千何万……の死人が出ようが気にするようなタマではない。どこにホットスポットがあるとか言って一喜一憂している庶民の発想とは、はじめから土俵が違うのだ。別世界の生き物と考えた方がいい。

 ODAの秘密も、それと同じ規模の巨大な利権システムである。したがって、その〝日本のからくり〟に目線が及ぶのを避けるために、鈴木元議員が生贄にされたと、そういう顛末があったのだ。すると、元東電役員というより日本工営の幹部が〝呪いの焼き討ち〟にあった裏には何があったか。

 日本工営は東電を得意先とした企業であるから、原発事故では当然打撃を受けた。しかし、これを機会に脱原発事業として小規模水力発電などに乗り出して、東電に依存しないビジネスへの脱皮を始めていたのである。したがって、もし火災の原因が放火なら、これは元東電幹部が狙われたというより、利権の移し変えを企図した日本工営への脅しという線が浮上する。それは当然、日本工営と癒着した政治家への脅しでもある。

 松下金融担当相の〝自殺〟にも見られるように、一般常識とはかけはなれた別の世界がある。怪談というのは、ときにこういう読み解きのきっかけになるものだ。単に呪いの話で終わってもかまわない話題もあるが、それだけではもったいない話題もある。場合によっては怪談が目くらましになって真実を隠していることもあるわけで、そこに私は注意を払っている。こういう怪談の見方も、できるだけ伝えていきたい。

by kissyouten2006 | 2012-09-04 15:04 | 小池壮彦


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